働くということ・06 ガブリエル・アレクサンドル・サールさん | くるまの達人

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とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

駐日セネガル大使
ガブリエル・アレクサンドル・サールさん


私の国セネガルは、まだまだこれから
発展していかなければならない国なん
です。

現在の人口は1000万人で、そのうち満
足に読み書きができる人は300万人に
満ちません。外交官としての私の仕事
はたくさんあるのですが、個人的には
もっと多くの国民が行き届いた教育を
受けることができる環境を整えること
に、力を尽くしたいと思いますね。

思えば私は恵まれていて、ラッキーだ
ったんです。セネガルに生まれながら、
世界的な水準で考えてもいい教育を受
けることができました。

実は大学を卒業するときは、公務員に
なろうと思っていたわけでなく、多く
の報酬を期待できる銀行や石油系の企
業に勤めようと考えていたんです。と
ころが結果的に外交官として働くこと
になった。

これは、運命ですね。

やっぱり銀行家のほうがよかったかな、
なんて考えたこともありましたけど、
今ではそうは思いません。大学時代の
友人には、豪邸や莫大な資産を手に入
れることに成功した人もいますけど、
働くことの意義はそういうことだけで
はないですから。

外交官であることで、世界中の要人と
お会いすることができますし、いろい
ろな国を訪れて、そこに住む人たちと
いろいろな言葉で話すことができる。
気づけば、そういう体験をすることが
すごく好きなんだな、と考えるように
なったんです。これはお金には代えら
れない素晴らしいことだと思うんです。

そして世界のどこにいても、やはりセ
ネガルのことを思い出すんですね。

もしも私が民間の企業に勤めていたら、
セネガルという国の将来について、こ
れほど思いを馳せることはなかったか
もしれません。

あなたは何の為に働くのですか? と
聞かれたら、私は単刀直入にお金のた
めです、と答えます。

でもそれは、決して拝金主義というこ
とではなくて、お金が持っている価値
がとても重要だからと考えるからなん
です。

私が十分なサラリーを受け取れば、私
の息子たちに素晴らしい教育を受けさ
せることができます。そうすれば彼ら
は、きっと自分の子供たちにも同じこ
とをしてくれるでしょう。そういうこ
との継続が、やがてセネガルという国
を豊かにしていくと思うんです。

豊かさとかお金の大切さという言葉は、
日本のような経済大国と、セネガルの
ようなこれからの国とでは、必ずしも
同義ではありません。

週7日、365日働くことに日本人が疑
問を抱きはじめているのは、すでにそ
のような道を歩んで現在を築き上げた
という実績があるからなのです。

セネガルの国民は、これからそういう
道を歩んで行かなければなりません。
自分たちの生活を豊かにするために一
生懸命働くということが必要なんだ、
ということを、国民みんなに理解して
もらう必要があります。その為には教
育を整備しなければなりません。広報
もしなくてはいけません。

今すぐ豊かさを享受するためではなく、
これから豊かになっていくために必要
なお金なんです。

外交官として社会に出て34年が経ちま
すが、その間に私の気持ちはどんどん
国の将来を思う方向へと変わってきま
した。だからこそ、私の働く意義は、
まず一番に意味あるお金を稼ぐことな
んです。

Interview, Writing: 山口宗久


かもめ・2004年6月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです


※記事掲載への思いについて。


山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
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