知性が宿った椅子 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 「最近、私は人工知能に書かせた小説を読んでいるのですよ。人工知能は人間の小説家が書きたがらないような内容の作品でも文句を言わずに作成してくれますからね」 


  「どのような作品を書かせたのですか?」 


 「その小説は知性が宿った椅子が書いたという設定で作られているのです。主人公であり、語り手でもある椅子は民家の台所に置かれている家具なのです。そして、その椅子は他の家具にも知性が宿っているはずだと想像しています。しかし、それは思い込みに過ぎないのかもしれません。『箪笥は引き出しを開ける際に強い力を入れなければならないように仕向けているが、それは意地悪による現象ではなく、なるべく長く取っ手を掴んでいてもらいたいという寂しさの表れである』などと椅子は推測します」 


  「家具同士で意志の疎通ができるわけではないのですね?」 


  「ええ。そうです。すべては椅子の妄想でしかないのかもしれません。しかし、読んでいて退屈とか、寂しさなどを感じる機会はほとんどありません。椅子の想像力によって台所はとても賑やかな場所に変貌していくのです。なかなか面白いと思いましたよ」