旅先で注目された夫 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 旅先のホテルで壁に設置されている鏡の中を覗き込んでいる夫に妻が問い掛けた。「どうしたの?自分の姿が気になるの?」

 「ああ。この辺りの道を歩いていたら通行人からじろじろと見られているようだったから変な格好をしているのだろうかと心配になってね」と夫は鏡に映る自分の姿から目を離さないまま答えた。

 「何も変だとは思わないわよ」と妻は椅子に座ったまま夫の姿を見上げて言った。

 「この辺りの住民の目で見ると変なのだろう。彼等とは何かが違うはずだ」と夫は言った。

 「自分の姿が変だと感じるまで鏡の中を観察し続けるつもりなの?」と妻は呆れたような顔をして訊いた。

 「彼等との違いを見つけておきたいと思っているだけだ。自分の姿を変だと感じたいわけではないよ」と夫は顔をしかめながら答えた。