これからの世界 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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アメーバブログにて超短編小説を発表しています。
「目次(超短編)」から全作品を読んでいただけます。
短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。


 夫婦が居間でソファに座っていた。テレビでニュースが放送されていた。

 「これからの世界はどうなっていくのだろう?」と夫がテレビ画面を見ながら呟いた。

 「あなたは世界の未来に興味があるの?」と妻は夫に訊いた。

 「そうだね。経済指標が悪くて今後は不況になる可能性が高いというニュースばかり放送されていたら誰だって将来が不安にもなるだろう」と夫は浮かない表情で言い返した。

 「あなたが本当に未来を知りたいと望んでいるのならテレビのニュースなんか見ていても仕方がないわ。だって、経済指標は今までもずっと上がったり下がったりしてきたのよ。そんな数字の上下を見ていても新しい未来がわかるわけないわ」と妻はきっぱりと断言した。

 「それなら、どうすれば未来がわかるようになるの?」と夫は妻の力強い口調に驚かされながら訊いた。

 「新しい時代を切り拓いた偉人達の伝記を読めば画期的な発想が当初は世間の人々に受け入れられなかったという毎度お馴染みの展開が必ず出てくるわ。つまり、未来は馬鹿らしいとしか思えないような屁理屈の中にしか潜んでいないのよ。あなたが新しい未来を知りたいと本気で望んでいるのなら屁理屈の価値を軽視するべきではないのよ」と妻は答えた。

 「つまり、この世界は昔の偉人達が考え付いた無数の屁理屈の上に成り立っているのだね」と夫は言った。