写真の中の海 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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アメーバブログにて超短編小説を発表しています。
「目次(超短編)」から全作品を読んでいただけます。
短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 「先日の休暇中に海に出掛けましてね」

 「海ですか」

 「とても美しい海だったので感動しました。それで、私はカメラで撮影したのです。しかし、この街に帰ってきてから自分が撮った写真を見ても少しも感動を覚えないのですよ」

 「きっと写真の中の海が小さ過ぎるせいでしょう」

 「ええ。そうなのです。小さ過ぎるのですよ。それで、どうしたら大きな海を写真に収められるようになるのだろうかと悩んでいるのです。その技術を会得しておかなければ再びカメラを持って海に行ったとしても良い写真を撮れませんからね」

 「海と同じくらいに大きな紙に印刷するしかないでしょうね。しかし、あなたはそれでも物足りないと感じるかもしれません。海と同じくらいに大きくて、海と同じように波打つ紙が必要になるかもしれませんね」

 「しかし、そんなに大きくて波打つ紙はありませんからね。困りましたね」


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