夕暮れ時に友人達と一緒に公園のジャングルジムで遊んでいたのだが、どこからか排水孔に流れ込んでいく水のような音が聞こえてきたので私は動作を止めて辺りを見回した。
すると、黒い犬を連れている一人の老人の姿が目に入った。老人は立ち止まってジャングルジムの方に顔を向けてきたが、夕日を背にしているので視線の方向がわからなかった。既に音は消えていた。
そして、また排水孔に流れ込んでいく水のような音が聞こえてきた。どうやら黒い犬の鳴き声のようだと思って私は当惑した。犬にしては随分と奇妙な声だった。今度は音がすぐには消えなかった。私は動作を止めたまま犬の姿を注視した。犬は体毛が真っ黒で目がどこにあるのかもわからなかった。口は開いていたが、吠えているのかどうか判然としなかった。
目次(超短編小説)