鴉を真似る牛達の夢 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夢の中で砂浜を歩いていた。波打ち際に数頭の大きな牛達が立っていた。放牧されているのだろうかと考えたが、周りを見回しても飼い主のような人間は見当たらなかった。だとすると、野生の牛なのかもしれないと私は思った。

 ふと、鴉の鳴き声が耳に入ってきたので私は足を止めて視線を上げた。すぐ近くで鳴いているような気がするのだが、鴉の姿はどこにも見当たらなかった。私が辺りを見回している間も鳴き声はずっと聞こえてきていた。そういえば、牛達の体毛が鴉のような真っ黒であると気が付いた。牛達は口を開けていなかったが、喉の奥で音を鳴らしているのかもしれないと私は考えた。

 その音に合わせて私も喉の奥を鳴らしてみた。鴉の鳴き声を真似ようとしたのだが、素っ頓狂な音にしかならなかった。そして、その瞬間に目が醒めた。自分の喉が鳴らした音によって睡眠を阻害されたらしいと私は察した。


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