道を尋ねる声 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「この道を真っ直ぐですか?」と質問する大きな声が聞こえてきたので私は目が醒めた。

 家の前の道路で誰かが道を尋ねているようだった。瞼を開けると部屋の中が明るかった。何時頃だろうかと思いながら時計を見たが、まだ太陽が地上に出てきたばかりのようで普段の起床時刻にはなっていなかった。そもそも今日は休日なので早朝に目を醒ます必要がないと私は思い出した。

 「あそこの角ですか?」「私はあちらの方へ行けばいいのですか?」「どれくらい掛かりそうですか?」「本当にこの道でいいのですね?」「あちらへ行けばいいのですね?」「あそこの角を曲がるのですか?」

 道を尋ねている側の声は随分と大きいので言葉がよく聞き取れるのだが、答える側の声は小さいので言葉として聞き取れていなかった。そして、質問する側の口調がしだいに刺々しくなってきていた。似たような質問を何度も執拗に投げ掛けるようになっていた。

 ずっと同じ場所に留まりながら何度も道順を確認している暇があるのなら実際に歩き始めるべきだろうと思われるので私は彼等の問答を聞きながら焦れったいと感じていた。「さっさと行け」と怒鳴りたくなっていた。苛立ちのせいで眠気がすっかり消え失せた。


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