猫は話せなかった | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「今日、学校で古文の授業を受けたのだけど、昔の猫は人間の言葉を話せなかったらしいね」と食事中に息子が言い出した。

 「ああ。そうだったらしいね」と私は返事をした。古文の授業で習った幾つかの物語における猫の描写を思い出そうと試みていた。

 「しかも、昔の猫が人間の言葉を話せなかっただけではなくて昔の人間も猫の言葉を話せなかったらしいね。その当時から人間は猫を飼っていたみたいだけど、言葉が通じない動物と同じ屋根の下で暮らしていて不安にならなかったのかなと僕は思ったよ」と息子は言った。

 「昔の人間の気持ちを理解したいのなら試しに言葉がわからない演技をしながら生活してみようか?」と同じ食卓を囲んで座っていた猫が息子に提案した。

 「駄目だよ。僕は君と話したいよ」と息子は猫に笑い掛けながら即答した。


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