月の空 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 身体が空中に浮いていた。私は目を開けているつもりだったが、何も見えていなかった。それに、何も聞こえていなかった。なぜ自分は落ちないでいられるのだろうかという疑問が脳裏を過り、どうやら夢を見ているらしいと推察した。

 しかし、意識は覚醒しなかった。相変わらず肉体が空中に浮かんでいるようだと感じていた。今にも落下し始めるのではないかと心配して全身の筋肉を強張らせていた。ひどく緊張しているせいで私は夢を見ているという自覚をすぐに忘却した。そして、どこからか声が聞こえてきた。

 「ここは月の空ですよ。月は惑星よりも重力がずっと弱いのです。ここではあなたの身体も空気と同程度の重さしかありません。だから、落下はしませんし、上昇もしないのですよ」と声は言った。

 「どうしたら地面に下りられるのですか?」と私は問い掛けた。

 「あなたは地面に接触していますよ。しかし、地面を踏めませんし、歩けもしません。あなたの身体は空と一体になったのですよ。あなたのおかげで月の空はまた少しだけ広くなりましたよ」と声は答えた。


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