夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。
「ほら。大男が倒れているよ。海から流れてきたのかな?」
「ああ。そのようだね。この浜辺は本当に色々な物が打ち上がるね」
「この大男は死んでいるのかな?」
「死んでいるだろう。顔色が悪いよ。それにしても大きいな。できれば骨を標本にして博物館に飾っておきたいところだよ。でも、二人では解体できそうにないな。仲間を呼んでこよう」
「肉はどうする?食べられるかな?」
「腐っているかもしれないね。でも、焼いたら食べられるかもしれないな」
どうやら彼等は私が大男の死体であると考えているようだった。しかも、浜辺に漂着したと言っていた。私は自宅の寝室で睡眠を取っていたはずだったが、そういえば波の音が聞こえて来ているようだった。それに、地面に緩やかな傾斜があり、背中に砂の感触を覚えていた。どうやら本当に浜辺に倒れているようだったが、このままだと解体されそうだと思われたので私は恐怖に駆られた。しかし、全身が金縛りに遭ったように動かせなくなっていた。既に肉が腐っているのかもしれなかった。
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