数百年が経っている | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。

 「この身体は生きているのかな?」

 「僅かだけど、呼吸はしているよ。脈拍もある。これは生きているよ」

 「しかし、随分と顔色が悪いな。腐っているのじゃないか?まるで死体みたいだよ」

 「まだ当分は死なないだろうと思うよ。なにしろ数百年もこの状態を維持しているのだからね。この身体は老化もしないし、腐りもしない。数百年前と比べて体重が僅かに減ったようだけど、変化はそれだけね」

 「意識はあるのかな?」

 「さあ。わからないな。しかし、意識があったとしたら退屈だろうね」

 どうやら彼等は私の身体について話し合っているようだった。そして、私は自分が感知していない間に数百年という長大な時間が経過したらしいと察して愕然とさせられた。夢を見ていたという記憶もないので完全に意識を失っていたようだった。家族や友人達はおそらく既に死んでいるはずなので私は心細いと感じ、ずっと気絶していたいと望んだ。開けようと思えば瞼は開くかもしれなかったが、私は身体を横たえたまま頑なに目を閉じていた。


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