夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。
「ほら。この腹を人差し指で押してみなよ。どんどんと入っていくよ」
「本当だ。どんどんと入っていくね。腕まで入っていくよ。まるで際限がないみたいだ。どれだけ突っ込めるのかな?気になるね。どこかに長い棒がないかな?」
「ここに箒があるよ。これを突っ込んでみようじゃないか。どうだ?どれだけ突っ込めるかな?」
「凄いよ。本当に際限がないみたいだ。とっくに身体を貫通して床にまで突き抜けているはずだけど、どこにも引っ掛からないよ。ほら。もう箒が全部入りそうだ。このまま手を離してみようか?箒は永遠に落下し続けるのかな?」
「どうだろうね?試してみようじゃないか。手を離してみなよ」
「了解」
彼等の会話を聞きながら私は腹部に違和感を覚えていた。棒状の物体が体内で動いているという感覚が確かにあった。痛みはなかったが、気味が悪かった。しかし、全身が金縛りに遭ったように動かせなくなっていた。そして、私は箒がいつ床に落ちるのだろうかと考えながら耳を澄ませていたが、何も聞こえてこなかった。
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