犬になる | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「あなたには雨に打たれると犬になる呪いを掛けておきました」と魔女が言った。

 それ以来、私はどこに出掛ける際にも傘を持ち歩いている。それに、なるべく雨の日には外出しないように心掛けている。犬にはなりたくないのである。

 呪いを受けてから数ヶ月が経ったが、今のところ私は犬にはなっていない。雨に打たれていないのである。しかし、制約を受けているように感じられて窮屈なので魔女を捜し出して懇願してでも呪いを解除してもらいたいと考えている。今も私が住んでいる街のどこかに潜んでいるらしいという噂は耳にしているのだが、まだ再会は果たせていない。

 先日、外出先で突然の降雨に見舞われたのだが、私は傘を広げて呪いの発動を逃れた。その後、狭い路地で数十匹の野良犬の群れと擦れ違った。真正面から走ってきて風のような速度で私の傍らを通過していったのだった。そういえば、ここのところ街で野良犬を見掛ける頻度が増えたような気がする。ひょっとすると私と同じ呪いを受けた人々が犬に変化していっているのかもしれない。


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