象の鼻 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 さあ。そこのお客さん。あなたは長生きしていますか?どうですか?もう長く生きているんじゃありませんか?長く生きていて退屈していませんか?毎日が単調な繰り返しだと感じていませんか?私が売っている象の鼻はあなたの倦怠感を打ち破る画期的な道具かもしれませんよ。どうです?話だけでも聞いていってくださいよ。

 長く生きていると目新しい物事には滅多に出会わなくなるでしょう?どうですか?何を見たって既視感を覚えるのじゃありませんか?それは当たり前です。なにしろ人間の感覚能力が捉える情報には限界があるのですよ。そうでしょう?でも、それを打ち破った先にはまったく新しい世界が広がっているのですよ。

 見てください。これが象の鼻ですよ。象の鼻はお客さんを新しい世界に導く商品ですよ。どうですか?ええ。大きくはありませんし、長くもありませんよ。しかし、これだけ軽量で小さな機械の中に象の鼻と同じ嗅覚能力が内蔵されているのですよ。象の嗅覚は犬よりも優れているのですよ。

 象の鼻を装着すれば今までに感じていなかった匂いをたくさん嗅ぎ取れるようになりますよ。過去の記憶と重複しない匂いです。どうですか?目新しいものに出会った際に沸き起こる当惑や感激を再び味わってみたいと思いませんか?新たな発見に満ちた日々がお客さんを待っていますよ。どうですか?買ってみませんか?



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