ガラス玉を気に掛ける | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 催眠術師は言った。「この世のどこかにガラス玉があるとしましょう」「そのガラス玉があなたの心理面に影響を与えているのです」「表面が汚れていれば気持ちが曇るでしょうし、よく磨いて透明になれば晴れやかになるのです」

 それ以来、私はこの世のどこかにあるらしいガラス玉を事ある毎に気に掛けている。本当にそのようなガラス玉が存在していて自分の心に影響を与えていると信じているつもりはないのだが、わけもなく気持ちが落ち込んでいるような時には催眠術師の言葉が自然と思い出されるのである。

 先日、海辺でガラス玉を拾った。落とし物のようだったが、催眠術師の言葉が思い出されたので私はそれを拾って家に持ち帰った。このガラス玉も誰かの心に影響を与えているのだろうかと私は考えていた。表面を布巾で磨いてみたのだが、ガラスに不純物が含まれているようで透明にはならなかった。


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