蛙の母子 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「この子は自分が蛙だと勘違いしているのですよ」と女は言った。

 彼女が両手で大切そうに抱えている子供は体全体が随分と小さくて顔が緑色だった。そして、異様に大きな眼球を世話しなく動かして周りの様子を窺っていた。時々、私とも視線が合っていた。これは蛙ではないのかと思われたのだが、私はその考えを口には出さなかった。

 「夜泣きが騒々しくて困るのですよ」と女は言った。嬉しそうな表情だった。そういえば、女の顔も蛙に似ていた。肌が緑色で目が異様に大きかった。彼女は自分が人間であるという勘違いに子供を付き合わさせているようだった。

 「夜泣きですか。大変でしょうね」と私は返事をした。彼女の勘違いに自分も付き合っていこうと咄嗟に判断していた。


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