借金を申し込まれる | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「あなたには借金を申し込まれる呪いを掛けておきました」と魔女が言った。

 それ以来、私は頻繁に借金を申し込まれるようになっている。少なくとも十日に一度は依頼を受ける。時には自宅にまで押し掛けてきて要請される。金額は様々である。

 しかし、私は悉く断っている。魔女が掛けた呪いの影響だと承知しているので一切迷わずに拒絶しているのだが、時として犯罪紛いの行為に及ばれる場合がある。金を貸さなければ帰宅させないと凄まれたり、ポケットの中の財布をいきなり掴まれたりもする。しかし、それでも私は彼等の要請には断固として応じない。金を貸さなければならない呪いではないのである。

 ただ、彼等が金を借りようと平身低頭している姿を見ていると申し訳なくなる。彼等は私に掛けられた呪いのせいで依頼しなければならなくなっているのである。特に家族や友人などといった親しい間柄の人々から申し込まれた時には心苦しくなる。おそらく彼等も私にそのような姿を見せたくはないはずなのである。私は魔女が恨めしくなっている。呪いを解除してもらわなければならないと考えているのだが、彼女には再会できないでいる。


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