朝、電車に乗って会社に向かっていた。いつものように車内はたくさんの乗客がいて混み合っていた。私は片手で吊り革を握っていたのだが、ちょうど真正面から太陽の光線を浴びていた。朝日に照らされて街が輝いているように見えた。ガラスに付着した細かな埃さえもが光を放っているかのようだった。ひどく眩しいので私は顔をしかめていた。
やがて太陽は雲に隠れた。その途端にガラスに付着した埃は光らなくなった。しかし、街はまだ輝いていた。影と日向の境界が見えていた。私は辺りが暗くなった途端に耳の奥が静かになったような気がしていた。まるで朝日が騒音を立てていたかのようだった。太陽がどのような音を伝えていたのだろうかと考えたが、思い出せなかった。
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