将来の夢について | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 今日、学校で作文を書かされた。テーマは『将来の夢について』だった。僕は警察官になりたいと書いた。

 でも、正直に言うと僕は空き巣になってみたいと思う。この街にはたくさんの家がある。遠くの街に出掛けてみても家がたくさんある。電車に乗っていても窓の外にたくさんの家が見える。でも、僕はその中身をほとんど知らない。だから、僕はその中身を見てみたいと思う。中身を見てみたいだけだから何も盗むつもりはない。盗みは悪い事だと誰でも知っている。

 でも、正直に言うと僕は家の中身を見るだけでは満足できないかもしれない。家に中身があると知ったところで重大な発見であるとは思えない。誰かが暮らしていなければ面白味がないと思う。だから、僕は厳密に言うと空き巣になりたいわけではなく、透明人間になって誰にも見つからずに他人の生活を覗き見たいのである。

 でも、正直に言うと僕は他人の生活を覗き見ただけでは満足できないかもしれない。その他人に中身がなければ誰も住んでいない家と同等の価値しかないと思う。最近、僕は哲学ゾンビという考え方を知った。我思う故に我あり。本当に他人は思っているのだろうか?その疑問を確認したいと思うので僕は他人になってみたい。

 でも、正直に言うと僕は他人になっただけでは満足できないかもしれない。一度に一人ずつの人生しか体験できないのあれば自分以外の他人に中身があるとは確認できない。では、どうしようか?僕は同時に古今東西の全人類の全瞬間にならなければならない。それは一体、何なのだろうか?よくわからないけれど、とにかく僕はそれになってみたい。

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