美術館で火を噴く巨大怪獣の絵画を見掛けた。かなり大きな画面に描かれていた。私はその絵が放つ禍々しいまでの迫力に圧倒され、しばらく息を飲んで立ち竦んでいた。館内には怪獣を取り扱った恐ろしそうな作品ばかりが幾つも展示されていたのだが、それらの中でも火を噴く巨大怪獣の威容は一際目立っていた。
その日以来、私はよく晴れた空を見上げる度に物足りなさを感じるようになった。そこにある空間を埋める為にはかなり巨大な怪獣が必要になるはずだった。私は自分がその巨大怪獣になって好きなだけ火炎を吐き出せるとしたら心中がさぞかし清々とするだろうと夢想せずにはいられなかった。
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