小さな風景 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 休日に近所の美術館に入ってみた。一ヶ月程前の訪問時とは展示物がすっかり入れ替わっていて今は異国の画家の作品を展示しているらしかった。入口付近の壁に貼られているポスターに紹介文が書かれていたのだが、面倒臭いような気がしたので私は読まずに入館した。

 館内には小さな風景画ばかりが展示されていた。どれも正方形の額縁に入れられていて掌程度の大きさしかなかった。そこに森や街などが描かれていた。幾つかの作品を見物している内にどれも地平線が画面の真ん中を横切っていると気が付いた。木々や建物の配置にも作者の強い拘りが感じられた。

 あまりにも単調なので私は鑑賞している内に退屈な気分になってきたが、それと同時に安心感も覚えていた。異国の風景だったが、ずっと同じ高さに平坦な地平線があり、予想通りの場所に木々や建物があるという連続性に意識が慣れてきていた。

 それで、いよいよ展示物をすべて見終えて美術館の出口の前に立った途端に私は突如として不安に駆られた。足が竦んで美術館の建物から外に出られなくなった。ずっと小さな風景と対峙していたいという願望が心の中に生じていると気が付いた。

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