金魚を食べる夢 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 今よりもずっと小さい子供だった頃、金魚を食べる夢を見た事があるよ。随分と昔の夢だけれども、今でも記憶にしっかりと残っている。それというのも、生きている魚を丸飲みするなんていう体験は現実では一度もなかったから強く印象に残ったんだね。

 その夢の中では父も母も兄達も金魚を丸呑みしていたんだ。場所は自宅の台所でね。テーブルの上に大きな盥が置いてあったんだ。その中に何匹も金魚が泳いでいたのだけれど、僕の家族はそれを手掴かみして次々と口に放り込んでいたよ。とても美味しそうな表情だったよ。

 でも、僕はなかなか食べられなかったんだ。夢の中だったけれど、生きている魚を食べるという行為への抵抗感が消えていなかったんだよね。口には入れてみたけれど、どうしても呑み込めないんだ。舌の上で金魚が動いている感覚があって気持ち悪かったよ。いつまでも大人しくならないんだ。

 父や母が躾に厳しい人達だったから口に入れた物を吐き出すなんて無作法な真似はできるわけがなかった。だから、ずっと俯いたまま我慢していたけれど、結局、僕はあの金魚を食べたのかな?どうしたのだろうね?あの夢の顛末が今でも気になるよ。

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