階段の中途 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 階段の中途に腰掛けている。周囲には誰もいない。途轍もなく静かで、そのせいで聴覚を失ったのではないかと心配させられる。そこそこ規模が大きい建築物だが、どうやら内部には私一人しかいない様子である。そういえば、ここまで辿り着く道すがらにも一度も人影を見掛けなかった。

 座ったまま窓を見遣ると、夕刻が近付いてきている模様で、先程までよりも日が陰ってきている。屋内の照明装置が点灯されていないので私の周辺も徐々に薄暗くなりつつある。歩き続けて全身が疲弊しているので今日はこの建物内で一夜を過ごすつもりだったのだが、なんとなく居心地が悪いように感じている。空気が乾き切っていて埃っぽい。それに、建物自体も私一人の身には不釣り合いに広過ぎる。頭上に屋根はあるものの、この場所で睡眠を取るのならば野宿と大差がないような気がしている。

 私は階段の中途に腰掛けたまま窓の方をぼんやりと見つめ、他の建物に移動してみようか、と迷っている。もっと手狭な場所が好ましいのではないか、と思い始めている。

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