洗濯後に強い日差しに晒して乾かした衣類の清潔な感触が心地良い、と常日頃から感じていたので、私は仮想現実遊戯機でその感触を再現させてみた。抜けるような青空の下に途轍もなく広大な白布が広がっているのだが、それは重力に対して傾いているので、私はその上を延々と転がっていく。本来ならば天空が遠退き、いつかは地面に墜落するはずだが、ここは機械が生み出した架空の世界なので永遠に転落が持続する。
期待していた通り、白布のふんわりとした感触が快適である。私はたまにそれを掴んで転落を止めてみる。或いは、白布に腰掛けて滑り台のように座ったままの姿勢で下りていく。さらに、スキーの要領で両足で立ったまま滑っていけないものかと挑戦してみたが、白布が足に引っ掛かるので断念した。
面白かったので友人にも勧めてみた。しかし、彼は気に入らなかった様子だった。重力のせいで常にどこかへ連れて行かれる事を強要されているようであり、そのせいで窮屈な印象がある、という感想を口にした。しかし、一箇所に止まらなければ常に清潔な白布と触れ合っていられるのである。その点を彼が評価してくれなかった事はとても残念であった。
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