足音は飛んでいく | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 足音が飛んでいく。深いトンネルの奥へと吸い込まれていく。私はその全長の果てしなさを想像しようと試みて背筋が寒くなり、思わず立ち止まって足を竦ませる。そうして耳を澄ませてみるが、足音は一向に返ってこない。もう二度と戻らないのだと直観する。既に存在していないような気がしている。私は立ち尽くしたまま尻込みしている。もはや足音の立て方がわからない。巨大な筒型の空間には私の他に通行人がいないようで物音一つ聞こえてはこない。その静けさが実に薄気味悪いのであるが、かといってその状況を無造作には打破できないような気がしている。私はずっと躊躇している。緊張感ばかりが無闇に高まり、静止し続けている現状がしだいに苦痛に感じられてきている。足音はまだ戻ってこない。

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