伸びる夢 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 昼寝をしていて肉体の色々な部位が際限なく伸びていくという夢を見る。

 ソファに座っていたのだが、一方の足が部屋から抜け出し、近所の道路を這っていく。自動車に轢かれると大怪我を負うので私は道を横断しないように注意する。足は私の住居がある一画を何度も周回する。

 もう一方の足は庭の木に絡み付く。最初は上方に向かっていたが、枝の先端に至るとそのまま垂れ下がり、着地すると再び同じ木に登り始める。足の重量で幹が根元から折れないものかと心配する。

 手は台所と寝室に向かう。皿洗いや掃除をしようと試みるが、片手ずつでは作業が困難である。私は一箇所に両手を集めたいと念じるが、その願いは叶わない。

 眼球は窓から飛び出して上空を目指している。まるで空気よりも比重が軽い物体になったかのように一直線に上昇を続けている。白い雲が接近してきている。

 耳は洗面所の排水孔から下水管に向かう。聴覚がパイプ内の長細い空間に反響する水流の音を認識している。それはしだいに大きくなってきている。

 星空が見える。眼球が宇宙空間に到達したらしい。しかし、そこまで行くと自分が移動しているという認識が失われる。私は反転して地上に帰還するように念じる。振り返って惑星を見ようと試みる。

 背中と尻はずっとソファの感触を認識している。やわらかなクッションに吸い込まれていきそうな気がする。結局はすべての部位がそこに収束するのだろうという予想を立てて安心感を得ている。

 惑星が見える。急降下している。地面が迫ってくる勢いが凄まじいので冷や汗をかく。恐怖心に駆られて目を覚まし、そこで昼寝が終了する。ソファに座っている。

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