春に転がる | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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アメーバブログにて超短編小説を発表しています。
「目次(超短編)」から全作品を読んでいただけます。
短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 爽やかな青空の下で思い切り息を吸い込む。肺を拡張させる。肋骨を変形させる。どんどん吸い込んでいく。胸部が膨らんでいく。それに伴って服の生地が伸びる。肉体がまるで風船のように丸まり、巨大化していく。正面から風が吹いてきたので尻餅を着く。草が芽吹いてきたばかりの野原をころころと転がっていく。しかし、まだまだ空気を吸い込んでいく。比重が軽くなったので地面の凹凸に衝突した弾みでよく弾む。目が回る。もはや重力の方向さえ感知できない。天地が頻繁に入れ違う。空に向かって落下し、地面に向かって上昇する。春の風が私を転がす。野原は広い。どこまでも延々と転がっていく。

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