五年目の鳥 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 この辺りは赤道直下の熱帯地方に属し、年間を通じて明確な季節の変遷を示す要素が乏しいので私としても絶対の確信を持って断言できるわけではないのだが、認識が誤っていなければ自らの肉体を鳥類に改造してから五年近くの時間が流れたはずである。既に翼もかなり自在に動かせるようになり、意志の命じるままに宙を飛翔できるようになった。
 
 ただ、最近ではサエズリが上達し、他の鳥達に対して集合や離散などの様々な合図を出せるようになった事が何よりも嬉しい。なにしろ彼等よりも知能ではダントツに優れているのでコミュニケーションさえ取れれば集団の中で良い地位を得られる事は必定なのだ。この世界の先輩には渡り鳥のリーダーとして惑星のあちらこちらに群れを率いて飛び回っている元人間の猛者もいるらしいが、私も数年後にはそうしたレベルに到達していたいものだ。
 
 夢もあり、まったく不自由ない生活のようだが、一つだけ問題を挙げるとすれば人間時代の記憶が中途半端に残っていて、時折り好物だったソフトクリームを無性に食べたくなるのである。それで、ついつい通行人がソフトクリームを手に持っているところを発見すると上空から急降下しながら強引に啄むのだが、最近になって仲間の鳥達がその襲撃を真似するようになり、とうとう猟銃で撃ち殺される者まで現れた。私が人間としての自己を捨て切れなかったばかりに起こった悲劇である。なんとも嘆かわしい事態だ。まだまだ野生動物としての修養が足りない。

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