アヒルの誇り | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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アメーバブログにて超短編小説を発表しています。
「目次(超短編)」から全作品を読んでいただけます。
短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 子「ねえ、母さん。どうして僕だけが兄弟の中でこんなに醜いの?」
 
 母「子供は両親からそれぞれの遺伝子を受け継ぐのよ。父親からはY染色体かXa染色体が、母親からはXb染色体かXc染色体が一つずつ授けられると考えなさい。そして、うちの子供はすべてオスばかりだから論理的に考えると二種類の組み合わせしか成立し得ないという理屈になるわね。だから、三種類の男児が産まれたとしたら自然界の摂理をひっくり返す程の大問題になるでしょうけど、兄弟の中でお前だけが不細工になる運命を背負っていたとしても、それは常識の範囲を逸脱しない現象であって突然変異というわけではないの。わかったかしら?」
 
 子「その理屈だと僕以外の兄弟は一卵性双生児かクローンのように瓜二つの外見じゃないとおかしいじゃないか。なぜ兄さん達もそれぞれ違っているのさ」
 
 母「大した違いはないでしょう?卵だった時にはみんな同じに見えたわ。お前だけが醜かったのよ。ひょっとして、お前は自分だけがアヒルの子じゃないとでも思っているの?私が白鳥と密通して出来た子だとでも思っているの?自分の母親がそんな尻軽で不躾で淫乱な売女だとでも思っているの?」
 
 子「いや、そんな事は思っていないよ、母さん」
 
 母「そう。それは良かったわ。お前は私と父さんの息子として胸を張って生きなさい。そうすれば少しも醜くなんかならないはずよ」

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