肉そば汁 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 麻婆茄子を食べていて最後に挽き肉と味噌を炒めた物が皿の底に残された。茄子とのバランスを慎重に考慮していれば陥らなかったはずの事態であり、見通しが甘かったという点は素直に認めざるを得ない。しかし、その肉味噌だけをそのまま食すると濃厚な味ばかりが口の中に広がって辟易とさせられそうな気がする。不味いはずがないが、今さら食欲が刺激されるわけもない。そこで、私は中華麺を茹でて和えてみる事にした。
 
 まだまだこってりとしているが、なかなかの美味である。しかし、新味は乏しい。私はちょっと思案し、さらに湯を掛けてみた。一気にあっさりとさせる目論見であったのだが、期待していた以上に味が薄まり過ぎた。まったくもって迂闊であったとしか言いようがないが、肉味噌はあんかけ状になっていて湯には溶けなかったのである。それでいて汁の表面はぎとぎとと脂ぎっている。白湯ではなく、中華スープを足すべきだっただろうか?その方がまだ親和性が高かったかもしれない。

 茄子が旨いと思えば茄子ばかりを食べ、中途で味をあっさりと改変させたいと思えば湯を浴びせ掛ける。そんな自分自身の安直さが情けなくて落ち込みそうだ。私は反省しながらも自分が犯した失敗には責任を持つつもりで麺をするすると食べ切った。

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