石を積む仕事 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 煩わしさを感じながらも定刻通りに目を覚ますと普段通りに身支度を済ませ、まだ陽が高くない時刻に自宅から出発する。今朝は雨が降っているわけではなく、気温も高くないので歩き始めてみると清々しい気分になってくる。私は村を通過し、山の頂きを目指す。そして、その場所に積み上げられている石の塔に今日も一つだけ新しい石を上乗せする。それから、下から数えて幾つ重なっているかを確認して帳面に書き留め、さらに東西南北に配された定点からカメラで撮影する。それが私に課せられた仕事である。
 
 大抵、仕事は午前中には終了する。そして、今日はよく晴れていて雨が降ってくる気配もないので私は山小屋には立ち入らずに頂上付近の岩場で昼食を取る事にする。村全体を眺望できる場所に腰掛け、鞄から弁当箱を取り出す。基本的にこの仕事は気に入っているが、一人きりで過ごす時間が長いので時折り人恋しさを覚える。この頂上付近に他者がいて自分の仕事振りを見守っていてくれたら張り合いが倍増するかもしれない、とも思う。何か口実を設けて頂上付近に誰かを常駐させる類いの仕事を作ってみてはどうだろうか、と考えてみる。そういえば、石の塔はたまに崩壊するが、その原因を調べる仕事を職業斡旋所に提案してみるのはどうか。崩壊が風の影響か、野生動物の影響か、或いは、他の要因があるのか?それを調べる為にはこの頂上でずっと見守っていなければいけないだろう。しかし、そんな仕事は需要があるだろうか?あまりにも退屈であるし、拘束時間が長過ぎる気がする。私は一旦検討を打ち切り、弁当を食べる事にした。

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