どこのチャンネルも大して興味深い番組を放送していないので、彼はほんの一瞬だけ逡巡し、テレビを消す決心を固めて実行した。しかし、そこから放射されてくる光線が相変わらず視界に入ってくるので目的はまるで達成されなかった。
そこで、彼はその光線が放射されている空間ごと消してみる事にした。すると、室内が光と同じ速度で狭くなっていった。それどころか、思い掛けずブラウン管と強烈なキスをする羽目になった。
目を閉じてみても音声が耳に入ってくる。
仕方がないので彼は人間達がするように、リモコンでテレビの電源を消した。そして、待機電力が気になるので、ついでに発電所も消したのだった。
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