永遠の都 ローマ 後編 | ローマでお散歩

ローマでお散歩

ときどきローマ在住で、気まぐれ生活を送る私の、ガイドブックには載っていない、素敵なイタリア〈ローマ〉や
日本での生活、イタリア料理などをご紹介します。

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永遠の都 ローマ 後編です。


辛くなるなら、
なんで、なんで、なんで、、、
なんでこんな悲しい選択を
しないといけないの?

、、、、、、
言葉に詰まる私に
彼が言う。

いつかきっと、
別れてくれてありがとうと
思う時がくるよ。
心配するな。
僕より絶対に素敵な人が見つかるはずだ。

普段は短気な同居人が、
ここまで話すには
彼は彼なりに
色々考えて
決心したんだろう。

もう、受け止めるしかない。
彼は若い。
彼の未来のためにも。

嗚咽しながら、
一生懸命に勇気を出していった。
これを言ったら
お終いだとわかっていたが
、、、、、、、

私の荷物。
アルマーニのピンクのジャケット以外
全部捨てていいから。
ピンクのジャケットは、
あなたがプレゼントしてくれた
思い出の品だから、
あれだけは捨てないで。

俺は、
君の物は一切すてるつもりはないよ。

だけど、
お弁当箱なんかとっておいても
使わないでしょ?

自転車は、
売ってもいいし、
捨てても、
誰か欲しい人にあげてもいいから。

君の荷物は
捨てないよ。
僕にとっても思い出だから。
それに、
自転車がなきゃ、
君がローマに来た時に
困るだろ。

、、、、、
いっその事、
わかったよ。
全て捨てておくよと言われた方が
諦めがつくかもしれない。

しかし、
彼の優しさが、更に私を辛くさせる。

この5年と数ヶ月、
私にイタリア。
ローマと言う
新しい世界を経験させてくれて
どうもありがとう。

一緒に手をつないで
歩いたローマの街は
私の一生の思い出。
絶対に忘れないから。

俺も一緒だよ、
街に行くと、
ここを
僕のmy little chocoと
一緒に歩いたなって
街中に思い出が詰まってるよ。

ローマの街は、
僕にとっても君との思い出。
一生忘れないよ。

楽しい思い出を作ってくれてありがとう。

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覚えてるかい?
サンタンジェロ城
のレストランに行った事?
彼が懐かしむような顔で
微笑みながら話す。

うん、覚えてる。
最高にロマンチックな夜だったよね。

そう言えば、
大晦日のジョークの後、
彼がパソコンに入っている
私達の昔のビデオを
じぃーと1人で見ていた事。
今更なんで
と不思議に思った謎の訳が。

彼は
彼なりに考えいたんだろうな。

私さ、
あなたの嫌いだった
ブログ書くのやめるよ。
ローマでお散歩ってタイトルで
主人公は、
私と同居人とローマだったから。

ふーん。
そっけない同居人の返事。

夜中の3時から話だし、
外はすでに明るくなっている。
よりによっても
今日は、朝から
アホのおじさんを
車椅子に乗せて病院に行く日。

時間がない。
でも、
いま、すぐ目の前にいる
同居人が、
このスカイプを切った途端に
永遠に会えなくなるかも知れないと
思うと、
涙が、、、止まらない。

ガンで明日死ぬんじゃないから
そんなに
泣くな。
そんなに泣けるなら
また明日話せばいいじゃないか。
なっ?!

お前は1人じゃない。
辛い時、
困った時には
俺がいるから。
なっ!

病院のお迎えに
ギリギリの時間だった。
もう、
同居人の顔が見れるのも
タイムリミットだ。

わかった。
本当にありがとう。
あなたの事忘れないから。
幸せになってね。
ciao ciao.


私がそう言うと、
ありがとう。
see you soon.
いや
see you tomorrow
彼がボソリと言って
カメラの映像が消えた。


私には
わかっている。
see you tomorrowなんてない事を。
これは
彼の優しさだと。


カメラを切った後、
身体中の力が抜け、
どうしたらいいかわからなくなった。

終わっちゃったんだ。。。
こんなにも、あっけなく。

この5年と数ヶ月、
いちばんの心の支えが無くなった。

これは夢?
悪い夢だよね???
ふらふらと
力が抜けた体で外に出ると
朝日が眩しく私を照らす。


まだ春だというのに、
今日の朝日は、
ギラギラと
まるで、
同居人と泳いだ浜辺を照らす
太陽の様だ。

大切な物を失った悲しみ。
そして、
また、
一人ぼっちになってしまった。

同居人とローマは
私にとってセットである。

同居人の顔を思い出せば
ローマの風景が蘇り

ローマの風景や町並みを見れば
同居人との思い出が蘇る。


ブログを通じて、
数ヶ月前に、
ローマ在住の
日本人妻さん達と出会った。
せっかくこれから、
楽しもうと思った矢先だったのに。

それまでの5年間は
ローマに
1人も友達がいなかった。
だから、
全ての思い出は
同居人と2人だけの
思い出。

海外との
遠距離恋愛を
経験した人には
分かるだろうが、
一度連絡を途絶えてしまえば
風の便りは
入らない。

今、どこに住んでいるんだろうか?
元気でやっているだろうか?

たったそんな事すら
一生探し出せなくなる。

それが遠距離恋愛。

心の紐が切れてしまうと
いちばん近くにあったものが
遥か彼方
手の届かない所へと、、、、

同居人を失っただけではなく
大好きだったローマも失った。

同居人のいないローマは
行けば、きっと辛すぎるし、
良い思い出が
消えてしまう様で辛い。

気分を切り替えて
シャワーに入り
アホのおじさんの迎えの準備を
しなくては。

何気なく手にした
シャンプーは
ローマから持ち帰った物だった。

ジーンズも
机の上のチョコレートも。

トイレの飾りも
化粧品も、、、
冷蔵庫のバルサミコ酢まで。

気がつけば
私の生活には、
この5年と数ヶ月の間に
当たり前の様に
ローマが存在している。

このチョコレート
食べちゃったら
もう、次は買えないのかな???

そんなちっぽけな事ですら
づさづさと心を突き刺す。

同居人には
本当に感謝している。
彼は彼なりに
一生懸命に私を幸せにしようと
頑張ってくれた。

彼には幸せになって欲しい。

その為には
もう、連絡をしないほうが良い。
そう心に決めて
泣きながら過ごした2日間。


長編につき
➡︎永遠の都 ローマ あとがきにつづく