行政書士試験・平成25年度・問題5・解説① | 山田優の★行政書士試験憲法の分析★

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行政書士試験の憲法の過去問について分析するブログです。
分析の手がかりは芦部信喜著『憲法』(岩波書店)のみです。
「芦部憲法」があれば行政書士試験の憲法の問題は解ける!
ということを示したいと思っています。

こんにちは、行政書士の山田優です。

 下記の説明が少し難しいと感じる人はコチラの
「山田優の☆ちゃんテキ合格☆行政書士試験」
の補足説明を読んでみてください。



 今回から平成25年度問題5を検討することにしよう。私見であるが、これはなかなかいい問題である。その趣旨は、①基礎となる重要な知識であり、②すべて芦部憲法に記述があるということである。芦部憲法の記述と本問の選択肢の記述とは相当に類似している。芦部憲法の記述を素材にして作問したことは明らかであろう。


 権力分立に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1 アメリカでは、国会議員と執行府の長の双方が国民によって直接選挙されるが、権力分立の趣旨を徹底するために、大統領による議会の解散と議会による大統領の不信任のメカニズムが組み込まれている。

2 政党が政治において主導的役割を演じる政党国家化が進むと、議院内閣制の国では議会の多数党が内閣を組織するようになり、内閣不信任案の可決という形での議会による内閣の責任追及の仕組みが、一般には、より実効的に機能するようになった。

3 伝統的には、議会の立法権の本質は、国民に権利・利益を付与する法規範の制定であると考えられてきたが、行政国家化の進展とともに、国民の権利を制限したり義務を課したりするという側面が重視されるようになった。

4 一般性・抽象性を欠いた個別具体的な事件についての法律(処分的法律)であっても、権力分立の核心を侵さず、社会国家にふさわしい実質的・合理的な取扱いの違いを設定する趣旨のものであれば、必ずしも権力分立や平等原則の趣旨に反するものではないとの見解も有力である。

5 君主制の伝統が強く、近代憲法制定時に政府と裁判所とが反目したフランスやドイツでは、行政権を統制するために、民事・刑事を扱う裁判所が行政事件も担当してきた。


 今回は本問の全体を概観しておくことにする。

 権力分立の原理は極めて重要な事項である。芦部憲法では、第14章(これは国会の章である)の第1節「権力分立の原理」で扱っている。特に第1項「総説」と第2項「権力分立制の現代的変容」を綿密に検討する必要がある。思考の基礎になる重要事項を豊富に含んでいるからである。

 ただ、本問は柱書に「権力分立に関する……記述」とあるけれども、この第1節の記述だけを確認しておけばよいわけではない。選択肢2にもあるように、議院内閣制の知識も確認する必要がある。したがって、第15章第3節も参照しておこう。

 さらに、選択肢3と選択肢4については「立法の意味」についての知識が問われているから、第14章第2節第3項も参照する必要がある。

 選択肢5については、権力分立制の歴史性に関する理解が必要である(芦部14-1-1-2)。



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