ゴースト 二係捜査3 | 山田屋古書店 幻想郷支店

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物語を必要とするのは不幸な人間だ

作者は本城雅人。

 

過剰防衛による傷害罪で逮捕中の内科医と、数日前に子供の捜索願を出した女性との間に端緒を見つけたのは森内洸だった。20年前、同じ小中学校に通っていたのだ。発見は偶然だったが、二人の間に薄い糸を発見した部屋長の信楽は珍しく森内を誉め、さっそく内科医の柿沢が拘留されている新宿署に向かう。柿沢は女性、小深田亜理の名前を出すと目に見えるほど動揺し、それきりほとんど喋らなくなる。柿沢と亜理が会っていた目撃情報も見つかり、亜理の息子の飛翔の失踪に柿沢が関与している可能性は高まる。そして目撃情報を伝えると、柿沢は飛翔を殺害したと自供した。

 

部屋長の信楽と部下の森内、二人だけの二係捜査員が活躍するシリーズの第三弾。ちなみに4作目は今年の秋ごろ発売と書いてあり楽しみだ。今回は序盤で行方不明児童の殺害の自供が得られたものの、柿沢は死体を遺棄した場所を言わず、拘留期限が迫る中の捜査となる。

 

合間合間で柿沢と亜理の出会いから現在の状態が描かれ、二人が送ってきた悲惨な人生が明らかになっていく。亜理については途中までは柿沢らを翻弄する嫌な人にしか思えなかったが、彼女の生い立ちが分かるにつれて気持ちは変わった。搾取される一方の人生だったんだな。

 

タイトルのゴーストは亜理が怯えるストーカーの名前で、柿沢はその存在から彼女を守ろうとしている。そのゴーストの存在がこの事件のすべてだったと言っていいだろう。不遇な人生を送ってきた亜理だが、ゴーストから解放されたことで少しでも良い方向に歩いて行けると良いな。

 

次は天童荒太。