忍鳥摩季の紳士的な推理 | 山田屋古書店 幻想郷支店

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物語を必要とするのは不幸な人間だ

作者は穂波了。

 

親戚の結婚式のために岩手県に来ることになり、せっかくだからと前乗りして忍鳥摩季と先生はスキーを楽しんでいた。今日泊まるのはペンションで料理も豪華、就職活動中ということも忘れ、摩季はバカンスを満喫していた。外は記録的な大雪で、温泉は断念しあとは部屋で休もうとしていたときに事件が起きた。ペンションの1階に降りる階段に突然瞬間移動のゲートが出現したのだ。その一方通行のゲートは2階のあちこちに出現し、摩季たち宿泊客とオーナーは2階から降りられなくなってしまう。そんな中で殺人事件が発生、怯える摩季たちを尻目に常に冷静で紳士的な先生が調査を始める。

 

超常現象による犯罪、いわゆる特殊設定ミステリの連作短編集。あらすじは1話の「白銀のループ」より。瞬間移動現象ループ、一方通行のその瞬間移動を使って人体を切断するという殺害方法は面白いのだが、超常現象の存在を当たり前のように受け入れている登場人物たちに違和感を覚えた。

 

2話以降で摩季が超常現象調査士の資格を取り、警察にも超常現象を扱う部署が存在することが判明し、超常現象が珍しいながらも存在する世界であることは分かる。ただその説明は1話で出してほしかった。あとループについては一方通行と言いながらも電気やネットは使えるのが謎。一応、双方向だぞ。

 

一時的に時間が停止するストップ現象、読んだ本のあらすじ通りに他者を行動させるコントロール、そして同じ時を繰り返すタイムリープ、様々な超常現象が登場し、そこは面白い。それでも1話での違和感がぬぐえないまま、最後までピンと来ないまま読み終わってしまった。

 

次は雫井脩介。