警官の酒場 | 山田屋古書店 幻想郷支店

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物語を必要とするのは不幸な人間だ

作者は佐々木譲。

 

佐伯警部補に警部昇進試験の打診があった。かつて佐伯は裏金問題で警察に盾突き、その時の仲間たちもみな閑職に追いやられた。しかし重大事件の検挙率がトップクラスの佐伯を飼い殺しにするのは惜しい、という声が高まっているという。道警としては左遷された人間でも昇進できる可能性が残っている、というアピールにもなる。佐伯自身も昇進については考えていたが、いまは父親の介護もあり難しい状況が続いている。そんな話をしているとき、自動車窃盗の通報が入った。盗まれたのは工事業者の古いワゴン車で、ハンマーやスパナ、結束バンドなど犯罪に使われるものが中から消えていた。

 

道警シリーズの第一部完結編。最後まで読むとタイトルに納得する。佐伯の昇進と小島百合との仲、新宮や津久井など裏金問題の際の仲間たちの新たなる旅たちの作品である。主軸となるのはあらすじに書いたワゴン車窃盗の際に盗まれた道具を使った強盗事件で、札幌中を巻き込むことになる。

 

少年係の小島百合は頻発している女性によるスマホひったくり事件、佐伯と新宮はあらすじに書いた窃盗事件から振り込み詐欺事件、津久井たちは前述の強盗事件を追う。苫小牧にある競走馬育成牧場が強盗に遭い、現金と銃が奪われたのだ。政治家と縁がある牧場で、怨恨の可能性もある。

 

その強盗事件を実行したのが栗崎たち4人の男で、彼らは闇バイトとして雇われた。その牧場には被害届が出せない現金が数千万円あり、盗んでも警察には通報されない、とのことで生活に困窮していた彼らが応募し雇われたのだ。しかしトラブルがあり彼らは警察に手配されてしまう。

 

手配された強盗たちの暴走により札幌市内は緊張状態となる。いつも通り佐伯、小島、津久井の視点と、今回は犯人の一人である栗崎の視点からも物語が進んでいく。安定して面白いのだが、ちょっと飽きてもいたので、ここで完結編なのが個人的にはちょうどいい。2部もやるかどうかは微妙だなあ。

 

次は劉慈欣。