七帝柔道部2 立てる我が部ぞ力あり | 山田屋古書店 幻想郷支店

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物語を必要とするのは不幸な人間だ

作者は増田俊也。

 

高校生のときに七帝柔道に魅せられた増田は一浪して北大に入学し柔道部に入部したものの、想像を絶するような過酷な練習で何度も心を挫かれかけた。しかも初めての七帝柔道戦は負傷のため欠場してしまう。そんな増田たちも北大2年目となり、恐ろしかった4年目たちも引退した。しかしそれは七帝柔道で4年連続最下位というどん底の状態の柔道部のさらなる弱体化を意味する。残った3年目の先輩たちは頼りなく、増田と同期の竜澤が主力として活躍しなければ北大の躍進は無いのだが、東北大との七帝ルールでの定期戦は散々な結果に終わる。増田たちは強い北大を取り戻すことが出来るのか。

 

作者の北大時代の自伝的な小説の第二弾。前作はとんでもない練習と増田たち悪ガキの破天荒さが面白かっただけに、今作も楽しみにしていた。昭和の無茶苦茶なスポーツ漫画みたいな熱さとエンタメ性は今回も健在で、前作が好きだった人は間違いなく読んで損はしない一冊になっている。

 

七帝柔道とは旧帝大7校の柔道部だけで争われる特殊なルールの柔道大会である。試合開始直後から寝技が使用可能、15人対15人という大所帯の抜き勝負、決着は場外無しの一本のみと、国内外に類を見ないルールだ。勝つ役目と引き分ける役目、それぞれに熱いドラマが展開される。


増田と盟友の竜澤は2年目になり北大柔道部への思いが益々強くなり、激しい練習でぼろぼろになりながらも飲み歩き、いかにして強くなるかを語り合う。明治41年創部の北大柔道部は七帝柔道の名門中の名門である。その名に恥なき戦いをするため、彼らは血と汗を流し続ける。


東北大との定期戦では向こうの主力は「札幌には観光に来た、と言っており、その言葉通りの屈辱を味わう。そして増田と竜澤は3年目を迎え、柔道部を引っ張る幹部となる。いまだに七帝ルールでは勝ちがなく、このままでは勝利を味わずに引退になってしまう。そして最後の七帝戦が始まる。


素晴らしく泥臭い青春。北大柔道部に誇りを持ち、勝利のためにがむしゃらになる増田たちの姿に胸が熱くなる。増田や竜澤たちの活躍と苦悩はもちろん、彼らの後輩たちも厳しい練習を耐え抜き実力以上の力を発揮するのも良い。最高の柔道小説だった。


次は佐々木譲。