作者は鬼田竜次。
警視庁公安部に日本刷新党を名乗る団体から闘争宣言書という怪文書が届いた。税金を食いつぶす政治家や官僚に鉄槌を下す、というもので、最大のガンである厚生労働省を直ちに解体しなければ、その関連団体の職員を殺害する、と書かれていた。当初はイタズラだと思われていたが、数日後にライフルを持った党員による立てこもり事件が発生する。SITとSATが現場に急行し、SITの谷垣班長による説得が試みられるが、SATの中田班長は独断で犯人を射殺してしまう。谷垣と中田、対極の思想を持つ二人は日本刷新党による事件にたびたび投入され、そのたびに諍いを起こす。
犯罪者には正当な裁きと更生が必要、と考えるSITユニット1の班長である谷垣浩平。合法的に暴れたいだけのSAT制圧一斑の班長、中田数彦。最悪の相性の二人は、なぜか日本刷新党の事件に同時に派遣される。確かに優秀な二人ではあるのだが、上層部はもっと考えて派遣しろ、と言いたい。
高校生の頃に腕試しで警察学校に殴り込んだ中田は、生い立ちが不幸とは言え、合法的な制圧、破壊、暴力がなければ生きていけない狂犬で、陰で悪魔と呼ばれている。一方の谷垣は整った容姿と正義感から「王子」と呼ばれているが、中田に激高して彼に銃を向けたりして、中田と大差ない危険人物に思える。
第二回警察小説大賞受賞作で、オチが驚異的ということで読んでみたが、期待したほどではなく、中田や谷垣だけでなく犯人もイマイチ。デビュー作としては悪くないのかも知れないが、もう少し狂気が強めの物語かと思った。わりとすぐキレちゃう谷垣が一番狂ってるように見えるし。
次は中山七里。