山田屋古書店 幻想郷支店

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物語を必要とするのは不幸な人間だ

作者は降田天。

 

針山小学校3年1組には女王が君臨している。ぼくにオッサンというあだ名をつけたのも女王であるマキだ。女子たちはほぼ全員がマキの支配下に置かれており、彼女に嫌われないよう常に機嫌を伺っている。機嫌を損ねた者は露骨な嫌がらせを受けるからだ。唯一、オッサンの幼馴染で学級委員のメグだけはクラスをまとめようとしているが、根が内気のメグではマキに敵うはずもない。4年に進級してもクラス替えは行われずマキの天下が続くものかと思われたが、転校生のエリカという新たな女王の登場によってクラスの女子の勢力は二分され、激しい争いが巻き起こる。

 

このミス大賞を取った降田さんのデビュー作。女王であるマキとエリカの争いを覚めた目で観察しているオッサン。オッサンとっては幼馴染のメグがその戦いに首を突っ込んで傷つかないかどうか、だけが関心事だ。第一部ではあらすじに書いたような小学生女子同士の醜い争いが描かれる。

 

髪飾りがダサい、母親が老けている、そんなくだらない理由で争うマキとエリカだが、相手に対する攻撃は陰湿度を増していき、ついに死人が発生する事態に陥る。自分には小学生時代の記憶はないが、直接的で容赦の無い攻撃は非常に小学生らしく幼さと残酷さがありグロテスクだ。

 

第二部では教師の話、そして第三部では20年後が描かれる。読んでる間は第二部はちょっと意味不明だったが、第三部でその必要性が分かるのと、ちょっとした仕掛けに驚かされた。このミスの大賞を取ったのが納得できる作品だ。最近の作品は比較的安定感があるが、このころはかなり尖ってたんだな。

 

次は阿泉来堂。

作者は塔山郁。

 

ホテル・ミネルヴァのフロント係である水尾颯太は足のかゆみに悩まされていた。皮膚科では水虫と診断され、薬は指示通りに塗っているが痒みは一向になくならない。再度皮膚科を受診したものの、颯太の塗り方が悪いと説教される始末である。仕方なく塗り方について薬局で相談すると、地味な雰囲気の薬剤師の女性が意外な助言をくれた。颯太の症状は水虫ではない可能性があるという。疑いつつも彼女に勧められた皮膚科を受診したところ、足のかゆみはアレルギーによるもので、水虫という診断は勘違いであった。それが颯太と薬剤師、毒島花織の出会いであった。

 

人が良いフロント係の水尾颯太、そして職務に忠実で真面目な薬剤師の毒島花織が活躍する連作短編集。あらすじは「笑わない薬剤師の健康診断」より。親切にしてくれた毒島に好意を抱く颯太だが、真面目でお堅い毒島のことを誘うことが出来ず、読んでいるこっちがやきもきする。

 

颯太の先輩スタッフの馬場や、毒島の同僚薬剤師の方波見や刑部など、周囲のキャラクターも優しくて、とても読みやすい日常の謎系のミステリーだった。シリーズとしては5巻まで出ているようだが、薬の話と颯太と毒島の恋物語でそんなに引っ張れるのだろうか。そういう意味で続きが気になる。

 

次は降田天。

作者は桂木希。

 

一週間以内に、人類の将来に対して危機的と考えられる問題点に対して、ひとつ以上有効な具体的対策を世界が共同で示すこと。これが渋谷に生物兵器を仕掛けた北村正平の主張であった。雑居ビルの屋上に設置された生物兵器の散布装置、それは警察の手によって無力化されたものの、逮捕された北村は世界中に同様の兵器を仕掛けたという。北村の問いに対する猶予はわずか一週間、政府は大混乱に陥った。日本からの報告により世界中で生物兵器が捜索され、WHOの試算によれば、それらが起動すれば人類が滅亡するレベルの感染症危機が発生する可能性が高いことが判明する。

 

世界中で警戒されているトリからヒト、そしてヒトからヒトへと感染する鳥インフルエンザ、北村はそれを使って世界を脅迫する。人類の将来が暗いのであれば、いっそのこと絶滅させてしまえ、という話である。世界がパニックに陥る中、北村の孫娘が事件解決のキーマンであることが分かる。

 

北村の息子である浩一郎は、かつて火力発電に変わる新たな発電方法を生み出したが、その存在を脅威に感じた何者かによって殺害された。その事件によって技術も失われたかと思われていたが、浩一郎の娘である愛子が何らかの情報を持っている、と各国の情報機関が彼女を狙う。

 

CO2を発生させない新技術の太陽光発電、それは北村を納得させる可能性のある技術で、この事件を解決させる方法の一つだが、産油国にとっては脅威となる。そのため石油利権を守りたい勢力から愛子は命を狙われる。しかし彼女を守る勢力もある。義足の傭兵や領事館の大使だ。

 

はじめて読んだ作家さんだったけど、バイオテロとそこに至った理由、それを解決するための新エネルギーの話など、内容が盛りだくさんで楽しかった。アクションシーンも多く、特に愛子を守る傭兵が渋くてカッコいい。適度に楽しめる作家さんみたいなので、また機会があれば読んでみたい。

 

次は塔山郁。