-生殖補助医療による出生児は16.7人に1人-
令和4年4月から特定不妊治療に係る医療費が保険適用となりました。中央区では、保険適用された特定不妊治療とあわせて行った先進医療費の一部を助成することで、患者の経済的負担を軽減しています。本区における特定不妊治療費（先進医療）助成制度は、1年度あたり10万円を限度に最大通算6年度までです。助成要件として、東京都の特定不妊治療費（先進医療）助成事業の交付決定を受けていることとしており、都の上乗せとなっています。令和4年度は、特定不妊治療費（先進医療）助成の申請件数が想定を大幅に上回って推移したことから、当初予算1,810万円の1.6倍にあたる2,900万円の増額補正を行っています。今後は、申請件数がさらに増加することが予想されます。
中央区における特定不妊治療費助成の実績
令和2年度は190件
令和3年度は350件（所得制限撤廃・助成額増額）
令和4年度は447件（保険適用開始）
令和5年度は440件の見込み
不妊の検査や治療については、おおよそ5.5組に１組の夫婦が経験しています。全出生児に占める生殖補助医療による出生児の割合は約6.0％で、16.7人に１人に上り、体外受精、顕微授精、凍結胚などの生殖補助医療による不妊治療を受ける夫婦は、今や珍しくない状況となっております。
令和4年4月から特定不妊治療に係る医療費が保険適用となったことで、高額療養費制度も利用することができます。さらに、確定申告による医療費控除で患者の経済的負担はかなり軽減されます。しかしながら、生殖補助医療には保険診療や先進医療の対象ではない多くの治療があります。体外受精などの保険適用の治療と全額自己負担の保険適用外の治療を組み合わせると混合診療となり、保険適用になった部分も全額自己負担となることが問題視されています。例えば、流産を防ぐために受精卵の異常を調べる検査である着床前検査PGT-Aなどがあげられます。PGT-Aについては、やっと先進医療として認められ、保険が適用できるようになりました。
制度上の問題を踏まえ、中央区においては単なる都の上乗せ助成に留まらず、自己負担となっている生殖補助医療の助成や年齢要件の緩和など区独自の支援を検討してほしいと強く要望しています。不妊治療は期待と落胆の繰り返しで、肉体的にも精神的にも経済的にも非常に負担が重いものです。子どもを望むひとりでも多くの方を支援し、希望がもてる助成制度をなることを望みます。
東京都の卵子凍結費用の助成について
令和5年9月に、東京都は「卵子凍結への支援の検討に関する状況調査結果」を踏まえ、子供を産み育てたいと望んでいるものの、様々な事情によりすぐには難しい方に「卵子凍結に係る費用への助成」と「凍結卵子を使用した生殖補助医療への助成」を開始します。これは、加齢等による妊娠機能の低下を懸念する場合に行う卵子凍結に係る費用を助成する事業で、中央区の特定不妊治療費助成制度にも大きな影響を及ぼすものです。調査結果によれば、生殖補助医療の専門医療機関に「凍結卵子を用いた胚移植を行う年齢の上限」に対する質問の最多回答は「45歳」でした。
プレコンセプションケアの取り組みについて
プレコンセプションケアとは、将来の妊娠・出産に備えて健康管理を行うことを指します。若い世代の健康管理を促し、望む人には将来の妊娠へ備える情報を伝え、人生設計に役立ててもらうのが狙いです。これは、生まれてくる赤ちゃんの健康にもつながります。妊娠を希望するか、子どもを望むかは個人の自由ですが、プレコンセプションケアにより、早い段階から適切な知識を得て、健康で質の高い生活を送ることは、人生の選択肢を広げることにつながります。
東京都は、プレコンセプションケアに係る取組みとして「TOKYOプレコンゼミ」を開講しています。国立成育医療研究センターの医師が講師の講座を受講した方で、希望すれば既婚・未婚を問わずAMH検査を無料で受けられます。AMH検査とは、卵巣内に卵子がどの程度残っているのかを調べる検査です。年齢に関わらず、知っておきたい検査値です。
▽中央区特定不妊治療費（先進医療）助成制度
https://www.city.chuo.lg.jp/a0031/kosodate/shussan/josei/sensiniryou.html
▽東京都特定不妊治療費（先進医療）助成
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/kosodate/josei/funin-senshiniryou/gaiyou.html