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2/8(木)の『SONGS』は薬師丸ひろ子
松任谷正隆編曲のオーケストラversion『Woman』は圧巻だった。多くの歌手が経年劣化するなかで、彼女の声は驚きだ。変わらぬ透明なソプラノに年齢と共に表現力が深まっている。
かねてより、『Woman』は松本隆の最高傑作だと思っている。(もちろんユーミンの曲も傑作)
かなり際どい歌詞で、一歩間違うとドロドロの禁じられた愛の詩だ。
薬師丸ひろ子の存在と美しい歌声で『愛の死』に昇華している。
松本隆が薬師丸ひろ子に、ビルギット・ニルソンが歌うイゾルデを見たとしても不思議ではない。
窓のそばで腕を組んで
雪のような星が降るわ
素敵ね
もう愛せないと言うのなら
友だちでもかまわないわ
強がってもふるえるのよ
声が……
ああ時の河を渡る船に
オールはない 流されてく
横たわった髪に胸に
降りつもるわ星の破片
もう一瞬で燃えつきて
あとは灰になってもいい
わがままだと叱らないで
今は……
ああ時の河を渡る船に
オールはない 流されてく
やさしい眼で見つめ返す
二人きりの星降る町
行かないで そばにいて
おとなしくしてるから
せめて朝の陽が射すまで
ここにいて 眠り顔を
見ていたいの ”
寝そべる女の髪に胸に、窓から星の光が射す
愛し合う二人
この瞬間を永遠にするには?
中世の宮廷詩人が伝えた『トリスタンとイゾルデ』の物語
最後に、イゾルデはトリスタンの遺体に話しかける…
イゾルデの愛の死 ロヘリオ・デ・エクスギザ
・・・
甘い香りの中で
息を吐き(死に)ましょうか?
押し寄せる激流の中で
鳴り響く音の中で
世界の息吹の漂う中で
溺れ
沈み
無意識に
最高の喜び
ワーグナー トリスタンとイゾルデより「愛の死」和訳抜粋
日本に安珍清姫伝説がある
激しい恋情から、安珍を追い、安珍を憎み、激しい河の流れを渡るため「蛇」になる清姫
日高河清姫図 村上華岳 1919年
日高川を前に、清姫の着物に次第に「蛇」の相が現れる
清姫は、大蛇となって安珍を追い、最後には道成寺の鐘の中に逃げた安珍を焼き殺し、入水自殺する
『Woman』は、一歩間違うと安珍清姫伝説になるが、薬師丸ひろ子の天上から降りたかのような透明な声が安らかな死にいざう
女優薬師丸ひろ子は、類まれな歌姫でもある
果敢に「時の河」を渡る彼女を応援します
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