絵画の復元修復により、思わぬ画像が浮かび上がり話題になった作品がある。
ルネサンス芸術がフェレンツェで花開いていた15世紀、ネーデルラント地方(現ベルギー・オランダ)ではその後のルネサンスに多大な影響を与えた、油彩画技法の発明により、精緻な表現をもつ「ゴシックの写実主義」が頂点を迎えていた。
その最高傑作の一つが、ファン・エイク兄弟の「ヘント祭壇画」(1432年頃)です。
北方ルネサンスはサークルで解説
中央下が有名な「神秘の子羊と礼拝者たち」でイエス・キリストを表す神秘の子羊が生贄になっている。
写実的なのは、当然修復前の羊です。
しかし、ファン・エイク兄弟が生きていたネーデルラントの写実主義は、神秘主義的側面があるゴシック美術のそれです。
キリストを表す子羊が人面羊なのは神の化身だからでしょうか…
そういえば、もののけ姫のシシ神さまも人面です…
『復元プロジェクトを統括するエレーヌ・デュボワ氏は専門紙の取材に、子羊の本来の姿が明らかになり「皆が衝撃を受けた」と説明。本来の子羊は上塗り後の絵よりも「濃密なやり取りを見物人と交わしていた」としている。
ベルギー王立文化財研究所は声明で、プロジェクトによって「本来の鮮やかさ、細部の豊かさ、秀逸な色使いがよみがえり、あらゆる人が目にできるようになった」と称賛した。』そうです。
油彩画は上塗りが可能なため、第三者が作品完成後に描き直したケースがある。
現代の復元修復は、X線などを使った科学的調査で、完成した当時の作品に復元することが基本。
画家自身が上塗りして塗りつぶしたと信じられていた、フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」(1657〜59頃)の画中画は2017年の科学調査で第三者による塗りつぶしだと判明しました。
復元修復が2021年に完了し、2022年1月22日〜4月3日の「フェルメールと17世紀オランダ絵画」(東京都美術館)で日本初公開になります。
修復前
↓
修復後
キューピッドは「愛」を表し「仮面」は真実を隠す、仮面を踏みつけるキューピッドは「真実の愛」の象徴です。
さて、皆さんは修復前と修復後のフェルメールどちらがお好きでしょうか…
まずは会場に
足を運びましょう!!
画中画は日本画にもあります。
河鍋暁斎「大和美人図」二曲一隻
1884〜85年頃
右隻の屏風に描かれた農村風景の精緻な描写には驚きます。
機会があればぜひご覧ください。