兼職禁止の有効性 | 山岸久朗オフィシャルブログ「正義は我にあり!!」Powered by Ameba

①従業員が、会社代表者の実弟の設立した競争会社の取締役に就任したことを理由としてされた懲戒解雇につき、たとえ、解雇当時、右従業員が競争会社の経営に直接関与していなかったとしても、将来、直接関与する事態が発生する可能性は大きく、経営上の秘密が競争会社に漏れる可能性もあるから、右二重就職は、企業秩序を乱すもので、懲戒事由である「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇い入れられ、就職した者」に当たるとして、懲戒解雇が有効とされた判例があります。

 

②木工、家具の製作等を業とする会社の家具組立工が、同業の会社に就労したことを理由とする懲戒解雇につき、右就労は、会社が従業員の長時間労働による肉体的疲労度を軽減することなどを目的として特別加算金を支給して残業廃止する特別措置を実施中に、再三にわたる会社側の警告を無視してされたものであるから、就業の規律を乱したものとして、懲戒解雇事由である「他へ就業しないとの規定に違反したとき」に当たるとされた判例があります。

 

③建設会社の事務員が、会社に無断で、就業時間終了後である午後6時から午前0時までキャバレーの会計係として二重就職したことは、右懲戒事由に当たるとした上、右のような懲戒事由を定めた規定が置かれている以上、労働者が、使用者に対して兼業の具体的職務内容を告知してその承諾を求めることなく無断で二重就職したこと自体が、企業秩序を阻害する行為と評価されること、さらには、本件の兼業は、毎日6時間にわたり、かつ、深夜に及ぶもので、単なる余暇利用のアルバイトの域を超え、労務の誠実な提供に支障を来す蓋然性が高いこと等を総合すると、解雇は、企業秩序維持のためにやむを得ないもので、権利濫用に当たらないとされた判例があります。

 

④靴販売会社の営業部長が、同社の業種と同種の靴販売小売店を経営し、同社の取引先から商品を仕入れた行為は、同人と同社の間の信頼関係を損なう背信的行為であり、就業規則所定の懲戒解雇事由である他企業に就職した場合に準ずる程度の不都合な行為に該当するなどとして懲戒解雇が有効と認められた判例があります。

 

⑤各種フェンス及びネットの加工、取りつけ、販売を業とする会社の従業員について、同社に無断で元請け会社に自己を代表者とする他社名義の見積書を提出するなど、もっぱら自己のために営業活動を行い、同社の得意先を奪うことを企てたことが、競業避止義務違反等に該当するとして懲戒解雇が有効とされた判例があります。