電通の略式起訴「不相当」 違法残業事件、正式公判へ | 山岸久朗オフィシャルブログ「正義は我にあり!!」Powered by Ameba

簡易裁判所は、比較的軽微な事件について、検察官の請求により、公判を開かず(口頭弁論を経ずに、非公開の書面処理で)100万以下の罰金または科料を科すことができる。この手続を略式起訴といい、裁判を略式命令という。

 

今日、起訴人員総数の80%以上について、略式命令請求がなされている。そして略式命令が請求される人員の80%近くが道路交通法違反である。

 

略式手続にも問題がある。非公開であるため手続保障に問題がある。本来なら起訴猶予となるべき事案が、略式手続により罰金・科料の言い渡しにつながるなどの欠点がある。

 

<以下、朝日新聞>

 

広告大手電通の違法残業事件で、東京簡裁は12日、労働基準法違反罪で法人としての電通を略式起訴した東京地検の処分について、「不相当」と判断し、正式な刑事裁判を開くことを決めた。法人としての刑事責任が公開の場で問われ、山本敏博社長が出廷する見通し。

 

書面だけの審理でよいとして検察が略式起訴した事件について裁判所が「不相当」と判断するのは異例。長時間労働に対する社会の批判が強まる中で、大阪簡裁が今年3月、略式起訴された2件の違法残業事件について略式不相当として正式な裁判を開くことを決めるなど、最近は検察に厳しい判断が続いていた。

 簡裁は正式な裁判を求めた理由を発表していないが、複数の関係者によると、本社だけで約6千人の社員がいる巨大企業の違法残業の実態は複雑で、書面だけで量刑を決めるのは困難だと判断したためという。量刑を決めるに当たり、誰がどう労働時間を管理し、なぜ認定できた残業時間が短いのかを、公開の審理で問う必要があると結論づけたとみられる。

 東京地検は7日に略式起訴を発表した際、「上司が違法残業と認識して働かせていたのは4人で、時間は1カ月で最大19時間だった」と述べ、悪質性は認められないと説明。同種の事例を検討して判断した、としていた。

 労基法では法人に科せるのは罰金刑のみだが、裁判では検察が処分を判断した証拠が明らかになるほか、電通側の被告人質問もあり、通常は代表者として社長が出廷する。残業時間について労使が結ぶ「36(サブロク)協定」が無効だったことなど同社の労務管理が明らかになる。

 事件は、2015年12月に同社の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が自殺したことがきっかけだった。厚生労働省から書類送検を受けた東京地検は今月5日、違法残業を防ぐ体制に不備があったとして、法人としての電通を簡裁に略式起訴。高橋さんの元上司を含む電通本社の部長3人については、処罰を求めるだけの悪質性が認められないとして不起訴処分(起訴猶予)とした。

 厚労省の統計によると、15年に労働基準法労働安全衛生法などに違反したとして送検された事件は全国で966件あったが、同年に公判が開かれたのは4件にとどまる。