刑事裁判の被害者参加/心情意見陳述 | 山岸久朗オフィシャルブログ「正義は我にあり!!」Powered by Ameba

被害者は、刑事訴訟の当事者ではないとの理由から、平成12年以前においては、法廷で自らの意見を述べる機会は認められず、証人として出頭した場合に、尋問された範囲で心情等を証言する機会が与えられるにとどまっていました。


しかし、裁判が被害者の気持ちや意見を踏まえたうえで行われることを明確にするとともに、被告人に被害者の気持ちなどを直接聞く機会を与えられることで反省を促すため、平成12年施行の改正刑訴法において、心情意見陳述の制度が設けられました。


被害者は、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見を述べることができます。被害に関する感情とは、被害を受けたことで抱くに至った気持ちをいい、被告事件に関する意見とは、被害に関する心情を含む被告事件に関連する被害者の考えを言います。被害感情や処罰感情を述べることができるのは当然ですが、量刑についての意見も処罰感情の一種として許されています。

心情意見陳述で述べられた内容は、犯罪事実認定のための証拠とすることはできませんが、情状証拠にはなり得ます。


裁判長は、意見陳述が「既にした陳述と重複するとき」「事件に関係のない事項にわたるとき」「その他相当でないとき」には、意見陳述を制限することができます(刑訴法292条の2第5項)。「その他相当でないとき」とは、起訴されていない余罪にかかわる内容、訴因のうち争いのある部分の事実関係、不同意とされ公判に顕出されていない証拠の内容に言及したときなどがこれに当たると考えられます。

裁判長による意見陳述の制限には、不服申立はできません。


<以上、民事法研究会発行「犯罪被害者支援と刑事弁護」より一部引用>