元モーニング娘。の道重さゆみさんが、2025年1月19日に芸能界引退を発表した背景には、彼女が抱えていた強迫性障害(OCD)との闘いがありました。

 

強迫性障害の診断と症状

道重さんは2023年末に強迫性障害と診断されました。強迫性障害は、意に反して頭に浮かんで離れない考え(強迫観念)と、その強迫観念から生じる不安を打ち消すために繰り返してしまう行為(強迫行為)を特徴とする精神疾患です。道重さんの場合、仕事において過度なこだわりや過敏な行動が見られ、強い不安感や恐怖心を抱えていたことが報告されています。これらの症状は、日常生活だけでなく、芸能活動にも大きな影響を与えていたことが伺えます。

 

活動制限と健康への影響

診断後、道重さんは一部の活動を制限せざるを得なくなりました。所属事務所からは、医師との相談の結果、症状の改善が見られるまでの間、特定の仕事への参加を制限する旨が発表されました。コンサート活動などは、医師の診断を受けながら、症状の経過を見つつ継続していく予定でしたが、根本的な健康状態の改善には至らなかったようです。活動を制限しながらも、症状と向き合い、葛藤する日々を送っていたことが想像できます。

 

日々の葛藤と限界

道重さんは、強迫性障害によって日々の活動が徐々に重荷となっていったと語っています。ステージに立つ喜びを感じる一方で、舞台裏では不安や孤独感に苛まれ、心の中で激しい葛藤が続いていたと言います。特に、ステージを降りて一人になると、不安感や恐怖心が頭から離れず、不安定な日々を送っていたことを明かしています。公の場では笑顔を見せていた彼女が、裏では大きな苦しみを抱えていた事実は、多くのファンに衝撃を与えました。

 

引退の決断に至るまで

道重さんは、「安心したいと思っての行動が、結果的にまた不安に繋がってしまうことも分かっているのに、どうしても止まらず、敢えて自分から不安を探してしまっているような感覚にもなって、苦しい時間が続いています」と自身の状況を説明しています。この言葉から、彼女が強迫性障害と真摯に向き合い、深く苦悩していた様子が伝わってきます。

芸能活動を続けることが困難になり、最終的には自身の健康と心の安定を最優先に考え、引退という決断に至りました。2025年夏のコンサートツアーをもって全ての活動を終えることを発表し、22年間応援してくれたファンに感謝の気持ちを伝えました。

 

引退発表が示すもの

道重さゆみさんの引退発表は、自身の健康とメンタルヘルスを第一に考えた、勇気ある決断と言えるでしょう。この出来事は、芸能界におけるメンタルヘルスの重要性を改めて認識させ、多くの人々に影響を与えました。華やかな世界で活躍する芸能人であっても、私たちと同じように心の問題を抱え、苦しんでいるという事実は、決して無視できません。

道重さんの経験を通して、強迫性障害をはじめとするメンタルヘルスの問題に対する理解が深まり、より多くの人々が適切なサポートを受けられる社会になることを願います。