本日も散文! -2ページ目

俺は歴史を見るとき隅から見ることにしている16

「お前、今日もトリキンかい?」

「うるせいな。嫌なことがあったんだ。」

「どうしたんだよ。」

「今日帰ったらさあ、また親父が騒いでたんだ。

もちろん酔っ払ってな。

それで、俺も何時もの事だから黙ってたんだ。

時間になったから出かけようと思ってたら、

急にからんでくるわけ。お前も飲めって。

だから言ったんだよ。今は時間がないって。

それでさあ、俺言ってやんだよ。

俺はあんたとは違うんだ。

あんたとは違う人生を送るんだって。」


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親父さんは昔ミュージシャンをしていたが、

貧乏暮らしが面倒くさくなって、

家業の酒屋を継いだ。

最初の一、二年は良かったが、

自己嫌悪するうちに飲んだくれていった。


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彼は親の財産を受け継いでいた。

彼の大祖父は日露戦争で立派に彼らの恋人、夫、父親の手や足、

または命を奪ったあと、

彼の家族のために働いた。

地主、地上げ屋、アイスクリン屋、

ブォイラー工、山菜取り、ドライバー、

家政婦または愛人、漁師、酒屋、

孤高の音楽家、揚げ物屋、精肉工場員、

人魚売り、失業あるいは補填、真実または虚無、

酔いどれ、自惚れ、大企業、小企業、

素足、たばこ売り、マッチ売り、キリスト、ブッタ、

その他のそれに準ずる安定した職業。


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彼は仕事をしていなかった。

でも誰も何も言わなかった。

みんな知っていた。

彼が金を持っているということを。

まあ、それが重要というわけだ。


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俺が遊びに行くと、

親父さんはいつもへたり込んで一日中唄っていた。

「俺の酒はただの酒~、我が家の酒は金の酒~、

何の違いもないけれど、今日もこいつで

ヌック、ヌック~・・・」 


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彼の親父は

酒とボディビルが生きがいのナイスミドルだ。

家庭訪問に来た担任の山岸に

コップを投げつけたなんてこともあった。

そんなことも手伝ってか、

岩淵の成績表には

アメリカ仕込のあの数字が並んでいた。


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電柱の灯りが鮮明に俺の欲望を照らし出し、

ブランコの柵をドクトルマルティンスが蹴りだした

と同時に岩淵が来た。

ふらふらしていた。

手にはトリスキングが揺れていた。

よお!」

「おう!」


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俺は歴史を見るとき隅から見ることにしている9

給食が唯一の楽しみなんて世代ではなかったから、

唯一の楽しみは理科の実験と

彼女の所属する陸上部の練習を見ることだった。

垂れる汗、笑顔、ふくらはぎ、あるいは呼吸。

ハアッハアッハアッハアッハアッハアッハアッ」

「ハアッハアッハアッハアッハアッハアッハアッ」

「ハアッハアッハアッハアッハアッハアッハアッ」

「ハアッハアッハアッハアッハアッハアッハアッ」

恋は叶いそうになかった

話したことすらなかった。

今日が馬鹿らしくなっていた。

今日も落ち込んでいた。


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俺は中学に入って以来、

二年にわたって彼女にほのかな想いをよせていた。

彼女はとにかく最高だった。

他の屑みたいな女とは違って、

俺を高い所から見下ろすなんて事はなかったし、

勉強は普通だっけど、

スポーツは万能で、

幅跳びの選手でファッション雑誌が好きで、

なんといっても発育が良かった。


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岩淵はまだ来ていなかった。

日は落ちかけ、

地平線上にかすかに残っている。

いい気配だ。

頬をくぼませ、

いい男ぶってみる。

クラスの女に見せたかった。

特に新藤敦美に。


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