これほどの集中力でみた舞台は数少ない。
とにかく引き込まれ、見入ってしまった柿澤勇人の演技!
ミュージカルで初めてこの役者を見て、すっかり魅せられて、ファンクラブに入ろうかとまで思った。
朝ドラのエールにも出ていたが合わなかった。
大河で実朝を演じたが、本来の柿澤勇人の魅力は出ていなかった。
今日のハムレットこそ!
柿澤勇人の魅力が存分に発揮されていた。
実朝のときに比べて、頬はげっそりこけていて(貧相という意味ではなく)
はだけた前開きの服からは肋骨も透けて見えるようだった。
くぼんだ目は、ハムレットの鋭い感性を放っていた。
この役のために相当絞って痩せたのだと思う。
これこそ、悩めるハムレット
これこそ、復習に燃えるハムレット
勿論、持ち前の歌はなく、 セリフの連続だ。
2時から5時40分まで
走り、叫び、息を詰めて独白し、のたうちまわり、
剣で戦い、ものすごく体力を消費するのが伝わってくる。
前の方の席だったから、息が見えるようだったし、汗が光るのも、口から唾液が吹き出すのもみんなよく見えた。
あの熱演に引き込まれたのだと思う。
吉田鋼太郎は、テレビでよく見るようになったが彼はやはり舞台が似合う。
シェイクスピアが似合う。
蜷川幸雄が全シェイクスピアをやろうとして志半ばで亡くなり、後を継いで完成させたのが吉田鋼太郎。
今回はその2ラウンド目で、初回はハムレット。役者たち特に主演の柿澤勇人はそうとうなプレッシャーだったと思う。
終わった時、すぐにスタンディングオベーションになった。
歓声、指笛、かん高い悲鳴のような声…
単に立って拍手するよく経験する雰囲気ではなかった。
やはり私と同じように熱く感動した人達ばかりだったようだ。
久しぶりに舞台のよさ、
本物の感動に浸った。
シェークスピアの作品は最近もよく見た。
リア王、マクベス、オセロ、ロミオとジュリエット、
夏夜の夢…
でも考えてみれば
ハムレットは長いこと見てなかった。
劇中劇や狂気やオフィーリアの部分的な所は覚えていたが
細かいストーリーはだいぶ忘れていたのでストーリーが完璧に入った。
埼玉芸術劇場(与野本町)
ハムレット
柿澤勇人、クローディアス吉田鋼太郎 他
途中の道に、沢山の俳優の手形とサインのこういう物が並んでいる。
与野本町の駅前の薔薇はよく手入れされて美しく、
公演の成功を称えるように咲いていた。