発達アプローチによる自閉症療育情報

発達アプローチによる自閉症療育情報

自閉症総合サイト「自閉症・言葉の遅れに発達アプローチ | 家庭で楽しくできる療育法by矢幡洋」http://jiheishou-ryoiku.com/を運営しています。

 このたび小田急線沿線になる川崎市多摩区生田に児童発達支援所「発達アプローチ生田教室」を開設いたしました。拙著『数字と踊るエリ-自閉症を乗り越えた僕の娘』(講談社)でその療育体験を書いた長女が桜美林大学から合格をいただき、ようやく私自身の夢を追えるようになりました。

 長女の療育方法を探してアメリカから療育書を取り寄せるうちにその存在に気がついた、発達アプローチを日本で初めて実践する場を作ることを目的とした発達支援所です。現在、発達相談+療育体験を無料で一時間いつでもお取りできます(大変申し訳ありませんが、療育の中でお子様を見させていただくことによってより的確なアドバイスが可能となるため、「電話で発達相談のみ」というご要望は現在受け付けておりませんのでご了解ください)。
 午前9時から午後9時まで無料療育体験の予約のお申し込みを受け付けております(実施時間は午前9時~午後6時となります)。

 発達アプローチの説明は、http://jiheishou-ryoiku.comに詳しく書かせていただいておりますが、要点は以上の通りです。

1.自閉症を6つのステージに分けて考えます。定型発達児童の発達段階を参照してデンバーモデルやプリザント、ハネンモデルが提案した段階です。「今、どのステージまで来ていて、どのような点に重点を置いて療育を進めるか」という方針を明確にして進めます。

2.「課題をやらせて後から褒める」ではなく、最初から「子供が自発的にやりたくなるような面白いこと」の中に課題を盛り込みます。内容が楽しいので、お子さんが応じないことはまずありません。

3.「自然さ」を重視します。課題はご家庭でそのまま実施できるものばかりです。

4.社会性やコミュニケーションを重視します。これが国際的に自閉症の最も根本的な障がいとされているからです。プリント漬けにしても会話力が伸びるわけではありません。

 発達アプローチの中でも最新の流派であるデンバーモデルは、無言語の自閉症児の90%以上に言葉を獲得させることに成功し、ワシントン大学の研究では、2年間のデンバーモデルを終了した自閉症児は脳の活動パターンが定型発達児のパターンへと変化していることが確認されています。

 日本で唯一発達アプローチを実践している私たちの療育活動を今後ともよろしくお願いいたします。(川崎市多摩区生田8-17-10松下テラスハウスA棟、電話044-571-6611、小田急線生田駅徒歩7分)






 




 
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〇最も素朴なエクスチェンジ・ゲーム~自閉症児とボールを受けたり渡したりしよう~~
 

子どもが好むボールを選ぶ

最も初歩のエクスチェンジ・ゲームは、ただボールを手に持って交互に相手に渡すだけです。 
色・手触り・大きさなど、お子さんが好むボールを選びましょう。
そして、ボールを交互に渡し合いましょう。


 太郎君のボール!

 しかし、こんな遊びの中にも留意するべき療育的な数々の工夫が必要です。

始まりと終わりの宣言・アイコンタクト・同じ単語の繰り返し


「ボール!」と言って遊びの開始を宣言しましょう。

子どもの視線の高さに大人の身をかがめアイコンタクトを取りやすくします

「太郎君のボール」と子供の名前とキーワードを言いながらボールを渡します。

楽しそうに、イントネーションは大げさに!

子どもがボールを受け取ったら「ママのボール」と大げさに楽しそうに言って、受け取るポーズをしましょう。

これを繰り返します

終わる時は、「おしまい」と言って終了を宣言します

〇どうしたら自閉症児とアイコンタクトがとれるか
かがんだり腰を下ろしたりして「子どもの視線の高さを合わせ、アイコンタクトが生じやすい体勢をとる」ことがとても大切です。
できることなら、子どもの視線よりも少し下に位置するぐらいが望ましいでしょう。

大人の視線の方が少し下にあれば、子どもはちょっと顔を動かすだけでアイコンタクトを成立させることができます。



 また、他のところで述べましたが、ステージ2の子供は「一まとまりの行為がどこからどこまでなのか」ということの把握ができてゆく必要があります。

 このため、遊びの開始と終わりを宣言しましょう。ステージ2の子供は無言語を想定していますので、単語一つで「ボール!」「おしまい!」などと言えばよいでしょう。ボールを交換する時も「ママ」「太郎君」などの呼称に加えて「ママのボール」「太郎君のボール」と「ボール」という言葉を何度も反復します。

アドバンスト-投げる・キックなどによるボールの交換
距離を取ると、よりアイコンタクトの練習になる
 以上の素朴なエクスチェンジでも結構子供は楽しんで行います。しかし、これだけでは、ちょっと物足りなそうな活発なお子さんには、距離を取って、ボールを軽く投げる、キックなどによって行き来させることもできます。

 ここでも上記の言葉かけは行ってみましょう。しかし、ボールを投げたりけったりすることにエキサイティングを感じるお子さんは、アイコンタクトを相手に保持できない問題が生じます。

      こっち見てない



                      (やったやったあ!)ピョンピョン


 ボールを投げたり蹴ったりすることに成功すると、うれしさのあまり、相手の大人から完全に視線を外してしまう子供は珍しくありません。

 この方法はなかなか強力で、何回かボールがこちらに届くまで面白いアクションをやって子供の注意を離れさせないようにすると、段々そのアクションの大げさぶりを減じても、普通のボールの行き来が成立するようになります。

ボールが来るまで、自閉症児が目を離せないようなアクションを行う
 距離を取るとどうしてもその間に子供が相手から目をそらしてしまうだけの時間が出来てしまいます。しかし、これは、子供のアイコンタクトを長引かせるための絶交のチャンスです。

             とうっ(ここまでやる必要はありません)



 子供がボールが相手に届くまで相手に注意を維持できなければ、「わざとこっけいに取り損なう」「あわてた仕草・表情を見せる」などの、子供が見ざるを得ないオーバーアクションを行いましょう。

 

ボールの交換 | ターンテイキングとアイコンタクト★★
相互性を育てるエクスチェンジ・ゲーム
相互性にあふれた私たちの世界
Aさんがしゃべる-Bさんがしゃべる

AさんがBさんを見る-Bさんが微笑む

AさんがBさんにお金を渡す-BさんがAさんに商品を渡す


 私たちの世界の人間関係は、このような相互性(インタラクティブ性)に満ちています。

 もし、AさんがBさんに微笑みかけても、Bさんがチラリと見ただけで行ってしまえば、それだけで異常な事態-と言って大げさであれば、何かいつもとは違っています。Aさんは「Bさんは私のことが嫌いなのだろうか?」「気分が悪いのだろうか?」と気にするでしょう。それほど、相手のサインにリアクションすることは、空気のように当然と見なされています。

 自閉症児はこのような相互性を学び損ねてしまっています。そのために、自閉症児との遊びの中では「代わりばんこ」を繰り返す事が大切です。

エクスチェンジ・ゲーム-ものを交換する遊び
 このような相互性を築くのに役に立つのがエクスチェンジ・ゲームです。まさに、ものを交換する遊びです。最も代表的なものは、ボールでしょう。ボールにも様々な種類がありますので、エクスチェンジ・ゲームには色々なバリエーションがあります。
 

ターンテイキングを忘れずに!
 対人ゲームは「大人がやりっぱなし」「子供がやりっぱなし」にならないようにしましょう。大人は関わりをいったん中断して、子供を期待の目で見つめます。次の子供のターン(順番)はしばしば小さなジェスチャーや声を出すなど目立たないものに過ぎませんが、それらが見られた時には「子供の番」が終わったと見なして「大人の番」を始め、少ししたらまた止めて子供を期待の目で見つめます。



 このように、対人遊びの中にターン・テイキング(順番こ)の構造を入れるようにしましょう。子供に大人が一方的にいつまでも「高い高い」や「スイング」をやってやることは、単に子供に感覚運動遊びで得られる快感を一つ付け加えるだけで、人間との相互作用は生じません。
 

対人ゲームとは
 対人ゲームとは、おもちゃを使わずに、大人と子供が体と体を使って遊ぶゲームです。
 代表的なものとしては、以下のようなものがあります。

いないいないばあ

追いかけっこ

くすぐり

高い高い

お馬さんごっこ

枕(布団あるいは座布団を重ねたもの)の上で手を握ってもらってジャンプ

スイング(子供の両脇に手を入れて大人の顔の高さまで持ち上げ、大人が回転して、遠心力で子供が回ります)(とても疲れます)

(隠れん坊はルール理解が必要なので、このステージでの対人遊びには入れません。同様に「鬼ごっこ」になると鬼の交代などでルールが必要になりますので、ここではそのようなルールがない「追いかける、逃げる、捕まえる」だけのシンプルなものとします)

なぜ前コミュニケーションステージの自閉症児に対人ゲームが向くか?
 特に対人ゲームがなぜ前コミュニケーションステージの自閉症児の療育に向くか、以下のような理由があります。

前コミュニケーションステージの自閉症児は、「物をルールに従って使う」などの高度な文化的遊びではなく、心地よい感覚運動経験を求めています。上記の対人ゲームの中で、自閉症児の感覚にマッチする遊びを見つけられる可能性は高いです。

前コミュニケーションステージの自閉症児には、対人ゲームは人間と一緒遊ぶので、この時期に延ばしたいアイコンタクトの機会が多くあります。(お馬さんごっこはあまりアイコンタクトの機会がありません)

ステージ1の自閉症児は運動感覚遊びの孤独な世界の中に閉じこもりがちです。対人ゲームは否応なく他人との交流を含みます。

対人ゲームは、この時期の課題である「他人に意図を伝達すること(コミュニケーション)」を可能にします。

対人ゲームは、自閉症療育の前段階の基本であるターン・テイキング(代わりばんこ)の第一歩となりえます。

対人ゲームの真の療育パワーを最大限に引き出すには
 以上に挙げた重要な療育効果を上げるためには、幾つかの重要なポイントを踏まえなければなりません。

「始め」の合図(ジェスチャーで構いません)を入れる事
1.まず、お子さんが喜ぶ対人ゲームを見つけます。
2.ゲームを始める前に、必ず簡単なジェスチャーによる「始める合図」を入れます。(言葉がまだないお子さんを想定しています)例えば、「高い高い」であれば、両手で抱え上げるような仕草を何度か行う、など)これは、いつか逆にお子さんの方が同じジェスチャーを使って自分から積極的に対人ゲームを求めるようになることを期待するものです。また、ゲームがどこから始まってどこで終わるのかをはっきりさせるのは、「どこからどこまでがひとまとまりの流れなのか」ということを理解しやすくさせ、自閉症児に日常の流れを理解させます)
  アイコンタクトもバッチリ!   きゃっきゃっ





3.鉄則!子供が喜んだら、ごく短時間(数秒~10秒)で遊びを中断します


                 (エッもう終わり?)


 お子さんがどんなに喜んでも、必ずすぐに中断します。ずっと続ければ、単なる感覚運動的な快感だけで終わりです。子供の療育のためにやっているのであって、子供を喜ばせるためにエンターテイメントしているわけではありません。

4.お子さんが「もう一度」という何らかのサインを示すまで、お子さんをにっこり微笑みながら期待する目でじっと見つめます。


 
5.お子さんが何らかのサインを示したら(もっとやってほしそうに、体をプルプルさせるだけでもOK)、「二回目」を始めます。

           やったぁ!初めての意志伝達!



                (もっとやってよ)

6.この短いサイクルを繰り返します。
7.「これでおしまい」の決まったジェスチャーも忘れずに。

「意志伝達」とみなせば、いつかそれは意志伝達になる
 もしかしたら、対人ゲームをいったん中断した後のお子さんの行動(音を出すなど小さなものも含める)は「もっと続けて」という意思を伝達しているわけではないかも知れません。

 しかし、どんなに小さなアクションでも、それを「もう一回やってのサイン」と見なして、その後に次の親のターンが続くことを繰り返していると、子供のアクションは「もう一度やって」という機能を果たすことになります。つまり大人が「これが子供の伝達行為だ」とみなしてリアクションを続けているうちに、それは本当の伝達行為となるのです。


 
 「自分の意思を相手に伝えられる」ことが理解できていないステージ1の自閉症児にとって、対人ゲームをごく短くいったん切り上げることは、しばしば初めての意思伝達行為を引き出すきっかけとなります。